児玉 知美さん
中、高校生時代の英語の成績は5段階評価の3くらいで、大学は児童教育学科だった私が、英語で唯一の国家資格という通訳ガイド試験に合格するなんて...。人生には、信じられない事がおこるものです。きっかけは、10年以上前の米国滞在だったかもしれません。夫の仕事の都合で1年間だけということだったので、ウキウキと観光旅行気分で出かけました。ところが着いてそれ程たたないうちに、妊娠していることがわかり、気分が悪く外出も出来ない日が続きました。知り合いもいない知のアパートの一室で、あまりよくわからない英語のテレビを見て一日を過ごしていると、日々気持ちが落ち込み何とかしなければ出産どころか、自分がおかしくなるなってしまうのではと思い始めました。
それで、すぐ近くの学校で開講しているESLクラス(英語を第二外国語とする人のためのクラス)に出席してみることにしたのです。世界各国からの人々が40人くらい集まったクラスで、みんなお国なまりの英語なので、私も片言の英語でコミュニケーションをするのが楽しく、気分の悪さはすっかり治ってしまいました。
例えば、ノートに漢字を書いていると、「それは何?」「絵なの?」「いくつあるの?」またおにぎりやおすしを、布に風呂敷包みにして持っていっただけで、「ジャパニーズウェイ!!」と大歓声でした。
アパートで1人になってしまうのがいやで、結局直前までこのクラスに通い、無事出産の日を迎えることが出来ました。2人で出かけた米国から、3人で元気に帰国できるのも、大きくなっていくお腹を触りながら励ましてくれたESLのクラスメートのおかげ、日本に戻ったら英語をしっかり勉強して、またいつか世界各国の人々とコミュニケーションできる機会を持てるようにがんばろう...帰りの飛行機の中で決めました。
ところが現実はきびしく、思いどおりにはいきませんでした。通訳ガイドの大手予備校といわれる所に入学しましたが、育児や家事に追われ、なかなか勉強が進みません。一次試験には何とか合格したのですが結局資格取得には結びつきませんでした。月日はあっという間に流れ、もう通訳ガイドはあきらめようと思い始めた頃に、二度目の一次合格の通知が届きました。"うれしい"というよりとても追いつめられた気持ちになりました。もうこのチャンスをのがしたら、気力が続かないだろうと思ったからです。前回不合格だったのは、大手予備校のせいではなく、私の実力がなかったからなのですが、やはり、長い間通って成果のあがらなかった所へ、再び行こうとは思えませんでした。
そして出会ったのが富士アカデミーでした。こんな時期に入会させてもらえるのだろうか?予想に反して、とても好意的に、そしてまた、とてもリーズナブルな料金で、二次対策の授業を受けさせていただけることになりました。
正直な話、もうこれ以上の出費は、という時でもありましたし、専業主婦で無収入の私にとっては、とてもありがたい事でした。しかしそれ以上によかったのは、スタッフの方々の暖かい対応でした。
セミプライベートレッスンの人数の少ないクラスを捜してくださりながら、「他の人の発表を聞いて参考にしてみると良いですよ」とか「音読をすると、二次試験対策になります」等のことばをいただき、少しずつ元気がでてきました。結局4人のネイティブスピーカーの先生の授業を受けたのですが、特に印象的だったのが(すみません、名前を忘れてしまったのですが、イギリス出身の、奥様がライブラリアンという、ヒゲをたくわえられた先生)の授業でした。
私の英語はとても聞きづらいものであったと思うのですが、時間中、根気よく、色々な角度からの質問をし続けてくださり、私の答えのそれぞれに、適確なコメントをくださいました。この授業の時に、少し二次対策のコツがつかめたような気がしました。また、別の先生なのですが、「悪い意味で言っているのではないですが」と前置きされた後、「あなたはとても静かで、人と話すのがあまり好きではない人に見える」とおっしゃいました。このことばはショックだったのですが、以前二次試験に合格できなかった原因は、そのあたりにあるのかな、と考えるきっかけになりました。
ですから、試験当日は「私は明るい人」と自分に言い聞かせて臨みました。そして外の係の方に促されて入室すると、試験官は二人とも下を向いて何かを書いているようでしたが、できるだけの笑顔をつくって(少しひきつっていたかもしれませんが)「すわらせていただいていいですか?」と声をかけてみました。「ごめんなさい、どうぞ」とお二人ともにっこりと笑顔を返してくださり、和やかな雰囲気で、何とか最後まで会話を続けることができました。
一次試験、二次試験の勉強を終えて思うことは、通訳ガイドとして、もちろん英語の力は必要なのですが、あまりにも細かい文法の知識にこだわったり、丸暗記をするというような事よりは、人を相手とする仕事だと意識し、暖かい気持ちや、ことばの交流を心がける事の方が、より大切なのではないかということです。
富士アカデミーは、暖かい雰囲気のある所です。最後の授業を終えて外に出た時、合格して、またここに来られたらいいな、と漠然と思いました。それが現実になって、本当にうれしいです。
これから、ここで学ばれる皆さんには、ぜひ成果をあげていただきたいですし、私自身も、まだまだ足りない英語力や、人間性を、これを機会に磨いていくことができたらと思います。