■ 時事単語の実例
今回は通訳ガイド1次試験に出題される「時事単語」に関して少しお話をします。
通訳ガイド試験の時事単語問題は政治・経済・社会用語から日常会話レベルの単語に至るまで様々な単語が出題されています。なぜこのような単語まで知らなければならないのか、と疑問に思うこともあると思います。通訳ガイドを経験した立場から考えると、ほとんど必要な単語ばかりです。通訳ガイドが実務で説明する際に、また日本社会を語る上で欠かせない単語ばかりです。その一例として近年出題された単語を使って通訳ガイドの視点でまとめてみました。ガイド業務の一端がうかがわれます。
■ 都内1日ぶらり旅
外国人のお客さんとホテルを出て地下鉄の駅へ向かう途中、「自動販売機」(2004年出題)が道路沿いに所狭しと置かれているのに驚く。地下鉄のフォームにはイラスト入りの「矯正歯科」(2002年出題)の看板が目に付く。東京タワーの展望台から東京を案内する。東京の広さにほとんどのお客さんは感嘆する。眼下の墓地や寺社の話題になり、「三回忌」(2001年出題)、火葬、葬儀、「神主」(2000年出題)、「結納金」(1999年出題)等の冠婚葬祭の話をする。
昼食時デパートの日本料理店で、「鰊」(2002年出題)、「雲丹」(2000年出題)、「鯖」(2001年出題)に舌鼓を打つ。食堂を出ると「占い」(2003年出題)コーナーの前に若い女性たちが列を作っている。手相や血液型性格判断、お見合い結婚、出生率の低下等を話す。
「字幕」(2003年出題)つきの洋画を見た帰り、駅近くに屋台(2003年出題)が店開きをしている。ちょっと一杯飲むことにして、「自営業者」(2001年出題)である屋台の主人におでんと熱燗を頼む。自営業者に関係ある「国民年金」(2004年出題) や国民健康保険、確定申告について話し、「源泉徴収」(2000年出題)や「介護保険」(2000年出題)など日本の社会制度も語る。また長寿社会にも話が及び、「万歩計」(2001年出題)や「豆乳」(2004年出題)、「有機野菜」(1999年出題)など日本人の健康志向を話す。酒を酌み交わしながら明日の富士・箱根「日帰り旅行」(2004年出題)について打ち合わせをする。飲み過ぎを心配するお客さんに「迎え酒」(2000年出題)の慣例を伝授。酔ったついでに十八番の五木の「子守歌」(2004年出題)を披露する。お愛想に差し出した2,000円札の源氏物語が気に入って、昔読んだ古典「枕草子」(2004年出題)を贈ることにする。
地下鉄のドアに「水虫」(2001年出題)に効く薬の広告が目に留まる。優先席に座る若者に話が及び、少子高齢化、若者のボランティア活動参加、少年犯罪増加に伴う「少年法」(1998年出題)改正等を話す。隣に座って漫画を読んでいるサラリーマン風の方に話題が移り、終身雇用や年功序列の崩壊、実力主義賃金制度による所得「格差」(2004年出題)の拡大を話す。
地下鉄を出て、皇居近くのホテルに帰る途中、皇室のことを話題にする。「皇太子」(2002年出題)にお子さんが恵まれたことや、雅子さんと「宮内庁」(2004年出題)を話題にし、明日再会を約束して「さようなら!」を告げる。
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