■新人ガイドの初仕事
1.ツアー概要
お 客 様 |
ハワイ島からのご家族、5名様 |
期 日 |
2005年3月28日(月) |
旅 行 地 |
熊本(熊本城、水前寺公園、阿蘇山、草千里) |
2.体験記
新天地での社会復帰を賭けて
2005年3月28日は忘れられない初ガイド記念日となりました。3年前の春に富士通訳アカデミーに入学、その冬に資格取得、年明けに出産してから2年間は育児に専念していました。そして一ヶ月前の3月1日、長く住み慣れた埼玉から博多へ引っ越しました。新天地で心機一転がんばっていこうと決意、通訳ガイドの仕事を積極的に探し始めた結果、引越し当日に立ち寄った旅行会社から最初のお仕事をいただき、社会復帰の第一歩を踏み出すことになりました。
事前準備・・・熊本へ下見に
通訳ガイドの仕事には事前の準備が欠かせません。今回任せられたのは熊本の観光スポットを貸し切りタクシーで巡る一日ツアーです。九州に越したばかりの私がいきなりお客様をご案内できるはずもなく、以前熊本に住んでいた主人の両親にお願いし、家族そろって下見へでかけました。各見学スポットでは日本語と英語両方のパンフレットを集め、当日の自分をイメージしながら、撮影スポットやお手洗いの場所も確認しました。この日は3月20日、福岡に大地震が起こったのですが、偶然にも難を逃れました。
自宅に戻ってからは集めた資料をノートにまとめ、電子辞書を片手に当日話すセリフを書き出して練習しました。当日はお客様が何を質問されるかわかりません。見学する熊本城や阿蘇そのものについての情報だけでなく、周囲に生えている植物や自然など、目にとまるありとあらゆるものについて、わかりやすく、興味を引くような説明を考えました。
ガイド当日・・・優しいお客様とドライバーさんに助けられて
今回のお客様は80代の女性とそのご長男夫婦、お孫さん姉妹の5人家族で、ハワイからいらっしゃいました。ご家族にとってはおそらく一生の思い出に残る大切なイベントで、旅をともにする通訳ガイドは責任重大です。
当日はいくつかの試練がありました。まず熊本城ではご家族が大変熱心に見学され、予想していなかった質問が次々と飛び出し、緊張の連続でした。幸い同行されたドライバーさんが詳しく、所々で助け舟を出してくれたので救われましたが、自分ひとりだったらとても満足に対応できなかっただろうと思います。
スケジュールの管理もガイドの重要な仕事ですが、次の水前寺公園では予定時刻を一時間程オーバーしてしまいました。公園を散策する間に、お客様が写真を撮ったり鯉にエサをあげたりして時間がかかってしまったのです。お客様にのびのびと楽しんでもらいたいという気持ちと、スケジュール通りに進めたいという気持ちの狭間でバランスを取るのはとても難しかったです。今回は同じホテルに宿泊されるので多少ゆっくりできたのですが、その日に飛行機で帰られる場合などは、遅れは許されません。次回はもっと配慮しなければいけないと反省しました。
ツアーは天候にも左右されます。午前中は曇りから晴れになりそうな気配だったのに、昼食後に向かった阿蘇山頂は一面霧の中です。楽しみにしていたカルデラや雄大な景色は全く見えず、ロープウェイも運行中止でした。代わりにイチゴ狩りへご案内したところ、お嬢さんたちを中心に大変喜ばれ、ほっと胸をなでおろしました。
帰りのバスの中で、もう一仕事が待っていました。お嬢さんたちがお土産に買った天然石に占いの紙がついており、何と書いてあるのか尋ねられたのです。ホテルに着くまでの短い時間、大急ぎで英訳を書き添えてお渡しし、何とか間に合わせることができました。最後は笑顔で別れ、緊張だらけの一日が無事終わりました。
初仕事を終えて・・・お客様のための通訳ガイド
通訳ガイドは語学を使ったサービス業です。語学を使ってお客様の旅をサポートし、喜んでいただくのが仕事です。正解や手本がなく、自分で考え行動しなければならない点では、他のサービス業同様とても難しい仕事だと思います。また仕事中は一人きりなので、働きぶりを評価してくれる人がいません。自分では精一杯やったつもりでも、ベテランのガイドさんに比べたらその半分もできなかったかもしれません。同じことをしてもお客様によって反応は様々です。
しかし一つだけ確実にいえること、それは先輩ガイドや旅行会社の方から教えていただいたのですが、‘心’が大切だということです。それもひとりよがりではなく、相手の気持ちに寄り添うことです。私も今一度、お客様の立場になってこのツアーをふり返ろうと思います。そしてこれから経験を重ね、お客様に喜ばれる通訳ガイドになりたいです。
最後に入学以来お世話になっている富士通訳ガイドアカデミーの知念先生をはじめ、先輩ガイドやクラスメイトの皆様、関東新人研修でお世話になった日本通訳観光協会の皆様、このツアーを任せてくださった旅行会社の皆様、そして仕事を理解し支えてくれる家族に改めて感謝の気持ちを述べたいと思います。どうもありがとうございました。
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