■ 長崎デビューストーリー
お客様:
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医学系学会のグループ |
期 日: |
2006年10月16、19日(日) |
旅行地: |
長崎(原爆資料館、大浦天主堂、グラバー園、孔子廟、平和公園) |
博多に越して2年目の秋、ついに長崎デビューした。長崎といえば、遠藤周作の「沈黙」や「女の一生」、プッチーニの「蝶々夫人」の舞台。カステラにチャンポン。いずれにしても、関東にいた頃の自分にとっては遥か遠くの港町で、縁などないものと思っていたのに、まさかガイドすることになるとは。人生何があるかわからない。
長崎をガイドするに当たって、私は3度に渡るリサーチを行った。効率よくピンポイントで回れば、一度で済ませられたのかもしれないが、敢えて時間をかけたかった。見に行った、ではなく、過ごした、と言えるくらいに。稲狭山の100万ドルと言われる夜景もロープウェイで登って確かめた。きれいらしいですよ、ではなく、きれいでしたよ、と実感を込めて言うために。だから時間の許す限り長崎に留まって、長崎の空気を身体に馴染ませようと努めた。というのはおそらく後知恵で、本当のところは、長崎があまりにもステキで、吸い寄せられるように出かけてしまったのだ。
長崎は五感を刺激する。坂だらけの街並みは、和洋中と入り混じった建物を立体的に、ダイナミックに見せてくれる。夕刻になれば長崎湾の大きな船がボーっと汽笛を鳴らし、港町のムードを一層盛り上げる。チャペルの鐘が鳴り響く。海から運ばれる湿っぽい空気、潮の香り、カステラの甘くて香ばしい匂い、石畳を蹴る靴の音、エギゾチックでノスタルジックな街の表情・・・。ここは本当に日本なの?今なの?と疑いたくなるような、異次元に迷い込んだかのような錯覚。私は完全に長崎の虜になってしまった。
そして途方に暮れた。こんなに魅力的な街を、果たしてどうやって説明すればよいのだろうかと。そこで当時長崎で行われていた、「さるく博」(※)のプロデューサー、茶谷幸治さんを同事務所に訪れた。茶谷さんは長崎をキリスト教都市、貿易都市としての繁栄、日本の夜明けという3つのポイントに絞って説明してくださった。おかげで混乱していた私の頭の中は、一気に整理された。
※唯一の集合写真
(場所は別の日にお連れした福岡・太宰府天満宮)
ツアー当日は日帰りで団体客という条件もあり、街の情緒を味わうどころか、早足で駆け抜けるような状態だった。しかもこの時期は連日ガイドや通訳の仕事が続いたので、当日のツアーをこなしながら、フリータイムには携帯電話を駆使し、翌日、翌々日の手配や確認も進めるというマルチタスク状態。もちろん細かい変更やハプニングは当たり前のように発生するので、そちらも臨機応変に対処しなくてはならない。英語よりも知識よりも、問題解決能力で何とか切り抜けた感である。
いつかまた、長崎の街にお客様をお連れする機会があったら、今度はもっとゆっくり味わっていただきたい。そのためにも、長崎についてもっと知りたいと思っている。
リサーチ&ガイドの実況中継は、ブログ「明日は博多の風が吹く」の長崎コーナーに連載しています(長崎の写真も満載!)。併せてご参照ください。
※孔子廟にて
※さるく博
2006年4月〜10月にかけて行われた、長崎の魅力を再発見する長期的イベント。長崎市民が中心となって‘まち歩き’を楽しむ多彩なツアーが繰り広げられた。延べ700万人が長崎のまちを歩き、400人の市民ガイドさんが4700回のツアーをガイドし、その‘まち歩き’は今後も継続されるという持続的成功を遂げ、質を重視した新しい観光のあり方として注目される。なお、「さるく」は歩くという意味。 |