英語は、学生時代には好きな科目でしたが、文法や英文解釈だけのいわゆる受験英語の勉強にとどまり、会話は全くお手上げという状態でした。卒業後電機メーカーに入社して数年間英語とは全く縁のない業務を担当した後、社費海外研修の機会を得て1987年から1年間米国に滞在しました。1989年に海外部門に異動してからは、仕事上英語を使う機会が比較的多くなりました。
一昨年に再び海外関係の業務がほとんどないポジションに異動になりましたが、それと時期を合わせて、英語の能力を昇進の要件とするという方針が会社から発表され、幹部クラスから新入社員まで全員がTOEICを受験することになりました。
これをを機に学生時代の英語学習意欲が湧き返り、英語関係のトップレベルの資格であり、しかもTOEICとちがって会社を離れても(定年後も)収入の道になり得る通訳ガイドを取得しようと決意しました。
業務上英語を使う機会があったとはいえ、英語を使う対象は、担当業務という内容を熟知している狭いの範囲のことがらに限られており、通訳ガイドのような幅広い分野に関する英語力は力不足を感じていました。また平日は仕事があり学習時間を確保することが困難でしたので、自らを勉強をせざるを得ない環境に置こうと考え、富士通訳アカデミーの門をたたき、土曜集中コースに参加することにしました。
富士アカデミーの授業は、単熟語チェック、長文精読、ディクテーション、小テストというオーソドックスな授業スタイルで、知念先生の熱のこもった授業は、さながら平成の寺子屋の雰囲気です。通訳ガイド一次試験は、長文読解や英作文などが出題され、受験者の「地力」が問われますので、富士アカデミーの授業のようなコツコツ型の勉強方法がむしろ合格への近道になると思います。
コースに通い始めて、改めて英文解釈と語彙が自分の弱点であることを認識しました。語彙に関しては、時事問題と日本的事象に関する単語が一次試験の必須項目です。私は4月入学の分他の方に遅れを取っていましたので、5月連休からは毎週の宿題範囲に加えて、自分で計画を立てて「必須時事単語」テキストの暗記を始めました。単語はまとまった時間がなくても学習できますので、通勤途中の駅のホームや電車の中で、そして会社の始業前などちょっとした時間を見つけては一つひとつ覚えるようにしました。40歳を過ぎると学生の頃のようには単語が頭の中に定着せず、覚えては忘れまた覚えるの繰り返しでしたが、知念先生の「忘れるのを恐れるな、忘れる以上に覚えればいい。」ということばを心に留めて、本番直前にどうにか「必須時事単語」をひととおり終えることができました。「必須時事単語」は、まさに私の合格を決めた一冊です。
英文解釈は、富士アカデミーの授業で使う英文精読プリントをこなすのが精一杯でしたが、通訳ガイド一次試験はTOEICとは異なり多読速解を要求する試験ではありませんので、逆にこれで充分でした。仕事では時間に追われて英文の飛ばし読みに馴れっこになっていた私は、毎週の授業での知念先生の精緻な英文解析を聞く度に、自分はなんといいかげんに英語を読んでいたんだろうと反省させられることしきりでした。
一次試験が終わった直後は、やはり準備不足だったか、という思いにとらわれ、1年後の再受験を覚悟していました。そこへ合格通知が舞い込み、今度は1ヵ月後の二次試験の対策を迫られることになりました。7月までは仕事と通学がかち合わないように土曜コースを受けていましたが、二次試験対策は、週1回の出席では到底準備が間に合うはずもありません。そこで覚悟を決めて、朝早く出社して仕事に取りかかり、夜7時からの富士アカデミーの二次攻略セミナーに出席できるように仕事を終えるべく、生活リズムを切り替えました。週末も含め週に5日、とにかく富士アカデミーの集中講座に賭けて通い詰めました。特にDuffy先生には、面接試験における試験官とのコミュニケーションの大切さを徹底的に指導いただきました。試験直前まで二次攻略セミナーに通い準備をしましたが、本番の試験はさすがに緊張し、最初の質問がとっさに理解できない状態に陥りました。しかしDuffy先生の言葉を思い出して何とか持ちなおし、自分が朗らかで楽しい通訳ガイドになり得ることを試験官にアピールすることができました。
二次試験から三次試験までは、これも1ヵ月しかありませんので、自分なりに範囲を絞り込み短期詰め込み型の準備をしました。富士の3次対策テキスト過去問を解いたほか、地理は「旅に出たくなる地図」(帝国書院)、「観光日本地理」(日本観光通訳協会)で国立公園・国定公園のチェックをし、歴史は「詳説日本史」(山川出版社)を通読しました。一般常識問題はあまりに範囲が広いので、「日本国勢図会」でデータを暗記するのにとどめました。今年は一般常識問題の傾向が変わり、世界史・世界地理に及ぶ問題が出題されました。日ごろから新聞等で国際問題に目を通しておくと効果があると思います。
通訳ガイド試験は、名前の通り「通訳」の試験であり、かつ「ガイド」の試験です。「英語通」だけでも「旅行通」だけでも足りません。ややもすると英語ができれば通る試験だと誤解しがちですが、この試験では、日本の政治・経済・文化に関するトピックを的確に表現し、かつそれに関する自分の意見を述べることが求められます。しかもガイドとしての適性も審査の対象となりますので、この点でも他の英語検定試験と性質を異にします。一次試験のハードルの高さゆえについつい英語の読み書きのみに目が向きがちですが、日ごろからジャンルを問わず世の中の出来事に興味を持ち、それをどうやって他人に伝えるかを考え、言葉にしてゆく習慣を身につけることが大切だろうと思います。
富士アカデミーの特長は、寺子屋的な面倒見のよさと、この道のエキスパートである知念先生のノウハウが凝縮された教材です。読解教材は新しい素材から選ばれたものばかりで、本番の試験傾向を先取りすることができますし、必須単語集はその名の通り通訳ガイド試験に「必須」の単語が集められており、これだけで一次試験の単語問題に太刀打ちできます。教材や授業だけでなく窓口事務に至るまで知念先生の目がすみずみに行き届いており、先生の教えを忠実に実行すれば短期合格をぐっと引き寄せることができます。また、私にとっては職場から地下鉄で3駅の便利な所にあるのも幸いでした。特に二次試験対策では、ぎりぎりになりながらも夜7時開始の授業に連日通うことができ、それが一気に二次試験突破につながりました。
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