
仕事と英語の関連が出てきたのは私がNTT勤務中、国際局管理課勤務になった時なので、大学の教養学部以来20年以上たっていました。ここでの仕事は海外拠点に駐在する職員やJICA経由で途上国に派遣している専門職員に対する援助業務、海外からの訪問客の案内やお世話、途上国の電気通信事業体からJICA経由で来日しNTTで研修を受ける人々のお世話や授業の実施でした。
重要な案件には通訳がつきましたが、簡単なことは自分たちで直接お世話しました。そのため英語が必要になりやむを得ず新橋のソニーL.L.(今は神田外語新橋校)に2年間通いました。
そのうちNTTロンドン事務所(後の(株)NTTヨーロッパ)に5年半勤務することになりました。海外勤務をすれば英語がうまくなると誰しも考えがちですがロンドンの場合、市内は100人に一人の割合で日本人が住んでおり、食事、パーティ、買い物、休日の遊び、新聞、テレビ、いずれも日本語で済みます。職場の大部分は日本人で、電話も日本の本社や在英の日本人からで英語はあまり必要ありませんでした。 帰国後なんとなく英検一級を受けましたがあえなく失敗したので専門の学校へ2年間通いました。2年後にやっと合格したような次第です。その後NTTが出資した財団に移りましたが、主な仕事は当時の郵政省のお手伝いで、その中にAPECの事務レベル会合に出席することがありました。年に2回10年間、これを続けました。

■英語
そのうち通訳ガイド試験という資格試験があること、ならびにこれをとっておくと将来役に立つということを知り、これをものにしたいものだと考えました。自分の経験からすると何とか受かるだろうと高をくくって2002年7月に何の準備もなく受験しましたが見事不合格でした。試験内容はガイドとあまり関係ないように思えたのですがこれをこなさないと合格しないので11月に専門校である富士通訳アカデミーの土曜クラスに入学しました。模擬試験ではいつも時事単語に泣かされたので、頂いた時事単語集を必死で覚えました。デパートの包装紙でカバーしたのですがすぐに擦り切れ表紙が出てくるのでその部分にセロテープ張りました、これもすぐにに擦り切れるのでその都度上から張り足していきました。必須単語、熟語集には最初から皮のカバーをかけ、時事単語集と一緒に通勤途上、職場の昼休み、出張時の待合室、飛行機内、ホテルのロビーで暇を見つけてはくり返し覚えました。本の中はいろいろな記号がついてしまって真っ黒です。精読用英文は必ず予習をし、小テストと伴に復習を通じて単語力の増強に努めました。 新聞広告の中で「眠っている間に自然に英語の実力がつく」などというのがありますが、NHKラジオ講座の講師も言っているように誇大広告の代表みたいなものです。努力なくして成功なしだと思います。私は大学受験に失敗し一年間予備校に通いましたが、ガイド試験を受けるまでは予備校時代に一生で一番勉強したと思っていました。しかしガイド試験へ向けての最初の一年間はそれ以上に勉強したように思えます。特に加齢による記憶力の低下があるのでこれをカバーするためにもがんばる必要がありました。にもかかわらず2003年7月の試験も見事失敗し、11月からは富士アカデミーの2年生に進級することになりました。出張で土曜クラスを欠席することもありましたが必ず他の日の補講を受けたので出席率は100パーセントです。2004年の5月に十二指腸潰瘍で10日間入院しました。入院後一週間目が土曜日だったので医師の特別許可を受け点滴の針をつけたままその上から包帯を巻いてもらって四谷へ直行し授業の後病院へ帰りました。
■社会
大学受験で日本史を取ったのでこれは比較的楽に思い出しました。特に年代の「ごろ合わせ」記憶法はなかなか忘れないものです。「いざみろ後醍醐、吉野の桜」は「いざみろ」が西暦1336年を意味し、後醍醐天皇のとき、南北朝が始まり天皇は南朝の吉野へ移ったという意味です。地理はやや苦労しましたが頂いた白地図帳が真っ黒になるほどしるしをいれつつ読みかえしたのでなんとかなりました。ここでも「ごろ合わせ」を大いに使いました。例えば「東横大名殺人狂」は人口の大きい都市の順で、東京、横浜、大阪、名古屋、札幌、神戸、京都を意味します。日経、読売、ヘラルドトリビューンを毎日読み、社会常識の涵養に努めました。これだけの努力にもかかわらず2004年9月の試験も失敗しいわゆる3浪をすることになったので、自宅学習に切り替え今までの教材を使い自習に専念し、富士の公開模試だけを受けることにしました。ここで初めて自分ひとりで学習することの難しさをいやというほど経験しました。強靭な意志と忍耐力が要求されます。そして学校のありがたさを痛感しました。

富士の2次対策には本当にお世話になりました。授業料無料はまことの申し訳ない気がいたします。午前の部、午後の部はすべて出席、夜の部はブラウン先生の授業に出ました。人数がやや多いので、なかなか順番が回ってきませんが、他人のインタビューを聞いて、先生の質問を正確に聞き取り自分なりの返答を考えてみたり、他人の答えと比較してみたりするのは大変勉強になりました。先にも述べたように年2回のAPEC事務レベル会合を含め一年に7ないしは8回の海外出張があったのと、週一回英会話学校へ通っていたのでヒアリングとスピーキングにはあまり苦労をしないですんだと思います。他人を評価する資格はないのですが、2次対策で感じたことをあえて一言言わせていただくと、大部分の人の「読む」、「書く」、「話す」3要素のバランスにおいて「話す」のレベルがちょっと気になることでした。つまり、あれほど難しい一次の筆記試験に合格した人が「話す」ことになぜこのように苦労するのかと不思議にさえ思えました。2次対策は一次の合格後に始めるのではなく一次対策と平行的にやるのがよいのではないでしょうか。

まずいえることは「学問に王道なし」ということでしょう。「眠っている間に単語が覚えられる」、とか「文法を気にしていては進歩がない」、あるいは「通じればよいのだから発音は気にしない」というのはやる気のない人にやる気を起こさせるのにはちょうどよいキャッチフレーズかもしれませんが、すべて正しくないと思います。「努力なくして成功なし」を肝に銘じるべきだと思います。ゴルフの中島常行選手が言っていました、「成績は練習量で決まる。」と。いやいやながらやっていくのは進歩につながりません。「悪循環から良循環へ」をお勧めします。つまり楽しみながら勉強する、そのためには人より先を行くことが大切です。日程表のページに乗っている予習単語は完全に覚え、学校では本を閉じて答える、精読用英文は必ず予習をし、当てられたら堂々と訳す、といった点にに努めたいものです。もちろん学力向上のためには復習が不可欠ですが、授業を楽しく受けるには予習が大切です。小テストと精読用英文は、構文はもちろん単語を覚えるのによい教材です。単語は単独で覚えるより文章の中で覚えるほうがずっと能率的です。
文法は建物でいえば土台です。土台のしっかりしない家はすぐにつぶれます。複雑な構文を理解するには文法が絶対必要です。発音はカタカナ英語から学び始めるがゆえに母音をつけてはいけないところに母音つけるといった間違いが多く見られます。tradeはカタカナで「トレイド」、outは「アウト」と表現しますがt やdのうしろに0(オ)の音はないのです。desk を「デソコ」とplaneを『ポレイノ』と読むのと同じで、おかしいどころか相手には通じません。知念先生も特にtとdの後に0(オ)をつけないようによく注意されていました。また、f、v、th、l、r、等の発音も自分で意識的に治さない限り誰も指摘してくれません。私は英語と平行的にフランス語もやっています。「二兎を追うもの一兎も得ず」という諺がありますが、英語と仏語は発音こそ違え、綴りや意味は共通点が多く相乗効果があると思います。学生さんなどでこの二ヶ国語で悩んでいる人には平行して学習を続けられることを勧めます。

富士アカデミーはなんと言っても知念先生の卓越した教授法と完璧ともいえる最新情報の入った教材が魅力です。ユーモアまじりの授業は教室の雰囲気を和ませ、またそれが一方通行でない点が非常によいと思います。自然と予習をして来るようになります。生徒同士も和気あいあいとしています。一クラスの人数が少ないからでしょうか。理想を言えば2次対策のように机の上に名札(2次対策と違い苗字を漢字で書いたもの)をおき、先生も生徒も名前で呼び合うようにすればもっと親しくなるのではないでしょうか。教材は英語、社会とも頂いたものを一筋に覚えていけばほかは必要ないと思います。欠席したとき補講をとるのに選択の幅がたくさんあるうえ、登校できないときはテープで補う方法もあり、大変好都合です。地の利もよく、JR、地下鉄とも非常に便利です。授業が終わって四ッ谷駅までクラスメートと話しながら歩いていくのも楽しいひと時です。
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